前回楽しい楽しいNFLの世界へのイントロダクションを、浅い知識を自負する私がつらつらと書きつづりました。 今回はその2回目です。
もう少し入り込む
前回の投稿をたまたま見かけて、さらにNFLのハイライトを観た方ありがとうございます。 私のつたない投稿が、もしかしたらあなたの趣味の一つのドアを開いたかもしれないと思うと感に堪えません。
そしてその奇特な貴重な方をもう少し一押するために、今回は書きます。 よりハイライトを楽しめるようになるために、私からの提案でございます。
ルールを覚える
いきなりハードルが高いことをあげてしまいました。 しかしながらやはりルールを覚えておくに越したことがありません。
安心してください。 覚えることは次のことだけです。
- 攻撃側は4回攻撃する間に10ヤード以上進む。
- 10ヤード以上進めば、新たに4回攻撃ができる(攻撃権の残高は繰越しない)。
- 4回目に見込みがなければ、相手陣地側に蹴り込む(パントキック)か、相手のゴールポストに蹴り込む(フィールドゴールキック)
- 攻撃側はランかパス、またはそのミックスで10ヤード以上進むことを目指す。 パスは1回の攻撃で1回だけ前に投げられる。
- 守備側は上記の攻撃を邪魔する(わかりやすい!)
実はこれは前回書いた先達の方々のお言葉と同じです。 ですが私は興味を持ってからのほうが良いと思ってます。 とりあえずこれだけおさえておけばハイライトは楽しめます。 次は見どころをおさえましょう。
攻撃側の見どころ
攻撃側の見どころはわかりやすいです。 ついでですので「アイシールド21」の登場人物たちを添えてみます。
- クォーター・バック(QB)
最前線中央の屈強な選手の股間から出たボールを受け、攻撃の起点になる司令塔です。 アメフトの花形選手といえばQB、一番目立つポジションですね。
冷静な判断力、苦しい態勢から放たれる絶妙なパス、ボールを手渡すときのフェイクなど、技術の粋をお楽しみください。 イケメンやイケオジが多いポジションです。
ここのところのQBは走って投げて、なかなか忙しいポジションだなと思います。 求められることが一昔前より多くなっている気がします。 大変な仕事だなぁと思います。
「アイシールド21」では主人公のチームの「蛭魔妖一(ヒル魔のほうが見慣れてますね)」がQBですね。
- ランニング・バック(RB)
QBからボールを手渡され、フィールドをかけるランプレイを演出するのがランニング・バックです。 ボールを前進させるために走る、この単純な行動に特化した働きを期待されます。 もちろん足が速いことが条件で、追いすがるディフェンスの選手を振り切る様子はシビレます。
ハイライトを観ていると、RBの選手はタックルを避けるためにくるりと回って体をかわすスピンムーブに称賛の声が寄せられます。 この身体能力の高さにもご注目ください。
そして何より魅力なのが、中央にできたわずかな隙間に飛び込み、スルリと抜けて華麗なステップを踏む様子です。 比較的小柄な選手が多いポジションですが、屈強な選手の間に飛び込む勇気がアツイです。 イカン。 私、ランプレイが好きなので気持ちが入りました。
「アイシールド21」では主人公の「小早川瀬那(セナ)」がRBですね。 20番代の背番号をつけている選手が多いです。
- ワイド・レシーバー(WR)
いっきに距離をかせぐことができるパスプレイは見てて楽しいですよね。 QBの投げたパスをキャッチすることがお仕事、それがWRです。 これもわかりやすいポジションですね。
ハイライトで流れるリプレイは、WRのプレイが多い気がしてます。 その理由は、得点にからむ&微妙な判定がからむからです。 細かいことは置いといて、キャッチを成立させるためには捕球後に両足がフィールド内に残っている必要があります。 倒れて地面にボールがつく直前まで、足をフィールドに残そうとするWRのエフォート、その粘りに驚嘆します。
他にはパスを邪魔しようとするディフェンスの選手を振り切ったり、競り合いを制したりするための身体能力の高さも堪能するポイントです。 どんなQBの優れたパスも、キャッチされなければ意味がないですから。
「アイシールド21」では同じく主人公のチームの「雷門太郎(モン太)」がWRです。 彼のキャッチのエピソードは胸が震えます。 80番代の背番号をつけている選手が多…かったのですが、最近は若い番号(おっさん風な言い方ですね)のプレイヤーが多いです。
守備側の見どころ
守備側は攻撃にくらべて見どころがわかりにくいです。 私も味わいどころを正直よくわかってません。 なのでプレイと結果を主体におさえていきましょう。
- ライン・バッカー(LB)によるQBサック
守備でいちばん重要なのは相手QBに仕事をさせないことです。 パスもランも「させない」。 そのために攻撃に対する守備を指示するのが重要な役目。 攻撃の司令塔QBに対して、守備の司令塔となるポジションです。
そしてその究極の行動がQBサック。 QBが仕事をする前に倒してしまえばいいという単純明快な目的のために、守備の2列目からQBに向かって突進します。 そしてQBを引きずり倒します。 QBサックは守備の花形プレイと言えるでしょう。 ハイライトでは、直後に吠えている、またはパフォーマンスしているシーンが観られるでしょう。
「アイシールド21」では主人公のライバルの一人、王城ホワイトナイツの「進清十郎」がLBです。 タックルが怖い怖いですね。
- コーナー・バック(CB)によるインターセプト
QBから放たれたパスをキャッチするために走るWRと対峙するのがCBです。 主な目的は「パスキャッチを邪魔する」こと。 なのでWRと同じような身体能力が求められます。 そしてWRは主にボールを気にしていますが、CBはボールと相手WR両方を気にする必要があります。
何気に苦労が多いポジションだと思います。 ホールディングとパスインターフェアレンスの反則が頻発するポジションであり、勝負どころなのでハイライトにもよく映ります。 たいていマイナスイメージなシーンが多いです。
しかしそれを返上するスーパープレイが発生するポジションでもあります。 それがインターセプトです。 WRがキャッチしようとするボールを「奪う」。 これで一気にゲームの攻守が逆転(ターンオーバー)します。
インターセプトはCB以外でも発生する結果なのですが、やはり勝負どころが多いWR対CBで発生するものがドラマがあります。 たいていロングパスなので劇的なものになります。 さらにインターセプトからタッチダウンという超盛り上がるプレイの用語も覚えておきましょう。 「Pick6」はハイライトでも頻出する単語です。 タッチダウンの得点が6点なので、インターセプト→タッチダウンをPick6と盛り上がる実況が多いです。
「アイシールド21」ではモン太のライバル、神龍寺ナーガの「細川一休」がCBです。 二人の競り合いはアツかったですね。
反則はこれだけでOK
山のように反則があるという印象のアメフト。 しかしハイライトを楽しむためには次のものくらいで大丈夫です。 NFLでは審判が黄色いフラッグを投げ入れ、かつマイクで反則名をいってくれるのでわかりやすいですね。
- ホールディング(攻撃・守備)
相手を「掴む」のはダメです。 攻撃側の反則のほとんどはコレですね。 パッと見わかりにくいですが、リプレイで見るとよくわかる反則です。 審判はよく見てるよなぁと感心します。
- パスインターフェアレンス(守備)
細かい条件は置いといて、パスのキャッチを邪魔してはダメです。 「そしたら絶対パスが成功してまうやん」となりますが、邪魔にもお作法が必要ということです。 ここぞというシーンで発生しやすい反則です。
- ラフィング・ザ・パサー/キッカー/パンター(守備)
プレイが終わったQBやキッカーは無防備になっているのでタックルしてはいけません。 怪我防止のためにもこの辺は厳しく取られています。 脳震盪とかありますからね。
大体この3つがハイライトでよく出てくる反則です。 他に付け加えるとするならば、「パーソナルファウルのなかのフェイスマスク(相手のマスクをつかむ。首の怪我防止)」と「フォルススタート(攻撃側がボールのスナップ前に動く)」があります。 その他は流すか、都度ググってもOK。
↑フォルススタートの例。2023 week1のLions vs. Chiefsから。
フォーメーションについて
ぶっちゃけよくわかりません。 特にNFLは難しすぎます。 が、一つだけ覚えておきましょう。 攻撃側の「ショットガン・フォーメーション」です。
特徴としてはQBが最前列から5ヤードほど後ろに立ってセットします。 QBは短いパスのようなスナップを受けて攻撃を始めます。
このフォーメーションだとパスプレイになる確率が高いです。 もちろん守備側にもわかりやすいのですが、これにフェイクやらオプションやらが加わって、必ずパスになるとは限らないというのがポイントです。
いずれにせよ面白いプレイになることが多いので、ショットガンだけ覚えておきましょう。
タイムマネジメント
1試合は、1クォーター15分 × 4クオーター = 60分 のハズなのですが、試合時間は3時間を超えます。 これは「時計が止まる」ためです。
アメフトは「いかにうまく時間を使うか」というタイムマネジメントのゲームでもあります。 時間の駆け引きがあることから、残り15秒で攻撃4回で逆転というドラマチックな展開が起こりうるわけです。
時計が止まるタイミングと進むタイミングを理解しておくと、このタイムマネジメントの妙がわかってきます。
- 時計が止まる時
時計は次のときに止まります。
- パスが失敗した時
- ボールを持った選手がコートの外に出た時
- タイムアウト(前半と後半で3回ずつ)
- ボールをスパイク(スナップした直後にグラウンドにボールをたたきつける)時
- 2ミニッツウォーニング
独特なのは2ミニッツウォーニングですね。 第2クォーターと第4クォーター、つまり前半と後半の終了2分前に時計が一度止まります。 逆転を狙う攻撃側にとっては貴重な仕切り直しになります。
- 時計を意志をもって進ませる
止まる時以外はほっておいても進みますが、意志を持って進ませるために次のシーンが見られます。
- ボールを持った選手をフィールド内で倒す/倒れる
- パスプレイよりランプレイを強いる/選択する
- ニーダウン
攻撃側が時間を使いたいときは、ボールをもった選手がフィールド内で倒されるのが望ましいです。 守備側も同じですね。 これは「終了が近づいているときに勝っているチーム」に都合が良いのです。 ランプレイを選択するのは時間が進む確率が高いからです。
ニーダウンは攻撃側が勝っている時の最後付近のプレイで見られます。 わざと膝をつくことで、フィールド内で倒れた状態になり時間が進みます。 これが出るとゲーム終了。
以上の組み合わせでゲーム終了間際の攻防があります。 これは本当に面白い要素だと思います。
ホームとアウェイ
他のスポーツ同様、アメフトもホームとアウェイがあります。 そしてホームのチームにはファンによる声援の後押しがあります。 もっとも不甲斐ないときのブーイングも容赦ないですが。
ホームのチームは観客のクラウドノイズが大きなサポートになります。 アメフトは攻守ともにプレイ前のハドルや声掛けが重要です。 ホームのファンは相手チームの邪魔をするべく、相手チームの攻撃時には大きな声を張り上げます。 声が届きにくいことによるプレイミスを誘発しているわけです。
実際ホームゲームは選手も気合がより入っているように見えます。 しかしシーズンが進んで不甲斐ない成績のチームのホームゲームでは、空席が目立ち始めるのがさみしいところでもあります。 負けていると早々に帰ったりしてね。 このへんはドライだなぁと思います。
人間だもの
以上のようにハイライトをより楽しむためには、という視点で書いてきました。 もっと知りたくなったらたくさんのサイトや先達の方々がいらっしゃいますので、そちらを研究なさってください。
最後に私が言及したいのは、知識ではなく、プレイヤー達の人間ならではの機微です。
超人的な能力を持ち、大金を稼ぐプレーヤーではありますが、彼らのほとんどは20~30代前半。 プレイの中に人間らしさが垣間見えるときがあります。
他のスポーツでもありますように、ゲームには魔物が潜み顔をのぞかせる瞬間があり、そのときに思いもかけず、いかにも人間らしいプレイが見られるのです。
逆転を狙うチームがボールをキャッチする瞬間によそ見して落球する、ボールキャリアがなんでもないファンブルをする、キッカーが連続してキックミスをする、ディフェンスが面白いようにフェイントにひっかかる、etc. なんとも人間くさいミスじゃないですか。
1プレイの重さが大きいアメフトではミスが目立ちます。 いつもならできるのに、いつもならそんなことないのにというシーンで犯したミスのことを想像するに、その重責はいかばかりかとこちらが身震いします。
それを乗り越えようとする選手たちの努力や意識の高さに、称賛が止みません。
このような人間ドラマも伝わればいいなと思ってます。